基本に戻る、ということ ~バリー先生のワークショップによせて~

本来アシュタンガヨガはとてもシンプルなシステムです。

インド古来から伝わるヨガの叡智を、パタンジャリが編纂した「ヨーガスートラ」。そこに定義される八肢則を、現代の私たちが体現できるように、故シュリ・K・パッタビ・ジョイス氏(=グルジ)がシステマテックに考案したのが、アシュタンガ・ヨガ・ビンヤサ・システム(以降アシュタンガ・ビンヤサ・ヨガ)です。

サマスティティヒから始まり、太陽礼拝を経て、一連の流れ(シリーズ)の練習を行い、またサマスティティヒに立ち戻る、私たちの日々の練習。このアシュタンガ・ビンヤサ・ヨガは、それを行う場所がどこであれ、行っているポーズが何であれ、基本はすべてみな同じです。

決められた呼吸
決められた視点
決められた姿勢

これら「呼吸=プラナヤマ・視点=ドリスティ・姿勢=アーサナ」はトリスターナと呼ばれ、アシュタンガ・ビンヤサ・ヨガを特徴つける重要なポイントです。このシステムにおいては、最初のサマスティティヒから最後のサマスティティヒまで、すべての動きと視点と呼吸の組み合わせが、キッチリと決められているのです。

身体が硬い/柔らかい、体力がある/ない、頭が固い/柔軟、チャレンジ好き/臆病気味・・・ といった千差万別な体と心のコンディションに加えて、経験、年齢、性別、環境・・・ といった条件のバリエーションを考慮すると、ひとりとして同じものはなく、人の数だけ、その練習があります。同じポーズをひとつとっても、20年来の練習生と、始めて間もない練習生とでは、まったく異なるアライメントや効能となるはずです。

それでも、ポーズの形の美しさや、動きのなめらかさ、といった、私たちが惑わされやすい「表面に現れる事象」に惑わされず、継続的に練習することによって初めて、このアシュタンガ・ビンヤサ・ヨガの本質に触れることができるのだと思います。

両手が床に届かなくても、ジャンプバックでお尻が持ち上がらなくても、今の自分のコンディションが許す範囲で、決められた呼吸、決められた視点、決められた姿勢を、意識的に行い、何度も繰り返す、その大切さも、実際の練習の中ではついつい見落としがちです。

なぜなら私たちは、「見た目がカッコイイ」とか「高度やポーズをこなしている」といった表面上の事柄に囚われやすく、練習そのものが「ポーズ獲得」という目的達成のツールに摩り替わることがあるからです。これは言い換えると、「いま/ここ」にある実際の現実を拒絶し、「いつか」という未来に幻影を投影しているようなもので、ヨガの意義とは真逆に振り子が揺れてしまってます。

「いま/ここ」 この瞬間に心地よく 「いる」 ということ

その大切さはアタマではわかっていても、実際に練習を始めると、やれハムストリングスが固い、やれバックベンドが辛い・・・と、それどころじゃなくなっちゃいますよね。でもポーズの練習を、「決して手を抜かず、しかし無理もしない」、といった、程よいバランスの中で行うことこそが、アサナ=ポーズの本来の意義なのです。

アサナとは、スティラでスッカムである
(どっしりと力強くゆるぎなく安定しており、同時に緊張から放たれた心地よさがある状態である)スティラスッカムアーサナム/sthira sukham asanam」
ヨーガスートラ第2章46節

つまり、アサナ=ポーズの練習というのは、互いに相反する両極の間でバランスをとりつつ、常に変化している「いま/ここ」に留まることであって、準備ができていない心身で理想のポーズを追い求める足掻きでは、決してないのです。

アシュタンガを始めたばかりの人も、何十年も練習を続けている人も、アシュタンガヨガの練習生として、私達はみな同じです。身体能力やポーズの違いは、些細な表面上の事象にしか過ぎません。実際私達が行っているのは、そのポーズのカタチや種類が異なっていても、「決められた呼吸、決められた視点、決められた姿勢」という基本においては、なんら違いはないんですよね・・・。

不思議なことに今回のバリー先生のワークショップは、当初「セカンドシリーズ」に焦点をあてた内容をリクエストしていたにも関わらず、なぜか気がついたら、この「アシュタンガヨガの大切な基本」を改めて再確認するような内容に、自然と流れ着きました。

そういえば、これまでのバリー先生のワークショップでは、「なぜ私達はヨガをやるのか」という問いに、私達ひとりひとりが真摯に向き合うキッカケを、常に与え続けてくれました。一見とても肉体的にハードなヨガと捕らえられがちなアシュタンガヨガが、いかにして単なる「体操・運動」から、「精神的な成長を促す学び」となりうるのか?それは外側のポーズでは図れない、奥深い部分の気づきであり、その基をなす重要な本質の部分は、全ての練習生に平等に与えられたダルシャン(ブレッシング=聖なる祝福)のようなものであるべきで、決してバックベンドで足首をつかめた人から順番にどうぞ・・・というようなものではないはずです。

しかしながら、日本のアシュタンガヨガ界の傾向は、ポーズの進度がとても早いのが現実です。時間をかけて基盤となる礎をゆっくり築くよりも、どんどんチャレンジして先のポーズに進む方がよしとされるようです。実際都内のヨガスタジオへ行くと、フルプライマリーだけではなく、セカンドやサードの練習をしている方々が、普通に沢山いらっしゃいます。

実は今回バリー先生のWSを企画するにあたって、これだけセカンド以降を練習する層が増えてきているのだから、セカンドシリーズにフォーカスした内容にしてはどうだろうか・・・?と提案をしました。これぞ、私自身がまだまだ「ポーズの進度」といった表面的な部分に囚われていた証拠なんですが(笑) それに対するバリー先生の返答は「NO」でした。そして、代わりに指し示されたのが、今回のテーマである 「back to basics 基本に立ち返る」だったのです。

たとえばセカンドのレッドクラスや、特定のポーズ克服のクラスといった、参加者の条件を制限してしまうような、限定されたポイントに特化するワークショップではなく、アシュタンガ・ビンヤサ・ヨガを練習する私達すべてが、要若男女や経験や肉体的条件を問わず、だれもが平等に学べる内容。アシュタンガヨガの本質に触れることで、私達個々がそれぞれに、自分なりの学びを深めていくワークショップ・・・、そっちの方が大切でしょう? と、バリー先生は黙ってそれに気付かせてくれました。

今回のバリー先生のワークショップに参加したからといって、バックベンドを克服したり、ジャンプバックやジャンプスルーが進化したりと、劇的に身体が変化することは、多分ありません。だけど、このワークショップによって、あなたの意識や、呼吸や、集中の質が、少しでも変化するなら、それは、どんな見事なポーズを獲得するよりも、とても素晴らしいことだと思います。

お時間ありましたら、ぜひともいらしてください。

広告

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中